プペらない話

今日は外出自粛で伸びきった髪の毛を切りに行った。

 

僕がよく行くのは,床屋と呼ぶにはもうちょっとちゃんとしているが,さすがにここでちゃんと予約とってパーマ当てるやつはいないだろうといった感じの駅前の理髪店だ。駅前にあるちゃんとした美容院は長身の兄ちゃんに「自己投資」について講釈を垂らされ,床屋然とした床屋の金髪の兄ちゃんにはワンピースのマリンフォード編のネタバレをされたので行かなくなってしまった。結局,話すとしても身の上話程度のここが一番落ち着くのだ。

いくらテレワークだなんだといっても真昼間から散髪できる社会的身分の人は少ないだろうと高を括っていた。ところが,この町には前期高齢者の数が多いことを忘れていた。前期高齢者はもっと昭和感の残った髪をテカテカにしていて腰にエプロンを巻いてるおっちゃんに切ってもらうんじゃないのか?もしかしてあなたたちもマリンフォード編のネタバレをされてしまったのか?白髭は強いけど死ぬよとか言われたのか?ともあれ2,3人待ちだったので待合いの座席に通された。

この理髪店の待合はそこに椅子が存在しなければ椅子と錯覚してしまうサイズの丸机とちょっとした雑誌類がおかれていた。美容院ようにファッション誌が並べられているわけでも,床屋のようにゴルゴ13美味しんぼが並べられているわけでもない。ところが,今日は,そのちいちゃい丸机に『えんとつ町のプペル』がデカデカと置かれていた。おいおい,こんな手垢のついたベストセラー絵本を触ってしまってコロナに感染したらどうすんだいと思い,別の雑誌を見繕った。

棚に突き刺さっていた関西ウォーカーを手に取った。大阪府に住んでいながら,ましてこんなご時世に関西ウォーカーを読む馬鹿はいない。無敵アイテムである。ペラペラめくっていると,なぜか瑛人のインタビューが掲載されていた。紅白歌合戦に出場が決まったのにどっちが紅組でどっちが白組かわからなかったらしい。まあ僕もどっちがドルチェでどっちがガッバーナかわからないから似たようなものだな。

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D&Gの創設者,ドミニコ・ドルチェとステファノ・ガッバーナ

なんだよこの写真。ほぼケミカルブラザーズじゃねえか。

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イギリスのテクノユニット,ケミカルブラザーズ

狙いすぎて採算が合わないプペル,狙わなかったのにヒットしてしまった香水。この相反する存在が両立しているこの理髪店は実は亜空間なのではないか。いや,むしろプペルの存在によって関西ウォーカーになど存在するはずのない瑛人のインタビューが導かれたのか?などとしょうもないことを考えていたら

 

いつもより多めに髪を切られてしまった。